【自己紹介】
はじめまして。ダンス作家の宮悠介(みや・ゆうすけ)です。1998年生まれ、新潟県で生まれ育ちました。今は東京を拠点にしつつ、地元では弟と一緒に「岩室AIR」というアーティスト・イン・レジデンスを運営しています。普段は、自分や家族の記憶、からだのコンプレックス、ふるさとの風景みたいなものを材料にして、ひとりで踊ったり、人と一緒に作品をつくったりしています。
地方でも都市圏でも時間を過ごしてきた経験を活かしたいと思っていた最中出会ったのが、このStepMのプログラムです。北アルプスを望む風景や、まつもと市民芸術館の空気、商店街や銭湯で出会う人たちとの距離感が、自分の生まれた町とどこか似ていて、勝手に「故郷に来たみたいだな」と感じています。
東京から電車でやって来て駅を出ると、少しひんやりした風と山のかたちが迎えてくれます。そのたびに、「あ、また帰ってきたな」と、ちょっとした里帰り気分になります。そんな場所で、じっくりと新しいダンスのことを考えられるのは、とても贅沢な時間だと感じています。

【これまでの研修・WSで感じたこと】
StepMでは、この約一年間倉田翠さんと一緒に、それぞれの作家が持っている「問い」をとことん掘り下げる時間を過ごしてきました。能やサーカス、歌舞伎の歴史など、一見所謂ダンスの外側にあるようにも思えることにも触れさせていただきました。そのたびに、「ダンスって、こんなに色んな入口から考えていいんだ」と、目の前の景色が少しずつ広がっていくような感覚を受けました。
9月に行われた山田せつ子さんのWSでは、「もっと体を信じてみていいよ」と何度も言われました。うまく踊ろうとする前に、今ここにいる自分の体を、そのまま受け止めること。自分の体を少し離れたところから眺めてみること。そうすると、クセやコンプレックスだと思っていた動きも、「あ、これが自分だけのリズムなんだ」と愛おしく感じられてきます。松本での滞在は、自分にとって「踊りの分かりやすい技術や成績を上げるための研修」というより、「自分の体とあらためて知り、新たな旅に出るための時間」に近いのかもしれません。
また、同じ育成対象者である女屋理音さん、櫻井拓斗さんと話していると、自分とは違う視点からダンスを見ていることに何度もハッとさせられます。「山」や「脱出装置」といったキーワードを通して、それぞれの作品の世界が少しずつ立ち上がっていく様子を近くで見られるのも、このプログラムならではの面白さだと感じています。
稽古の合間には、三人でまちを歩いたり、ごはんを食べに行ったりもします。スタジオの中では真剣に議論していた相手が、外に出ると「気の許せる旅の仲間」みたいになる。その温度差も含めて、松本で過ごす時間が作品の土台をゆっくりと耕してくれているように感じています。

【試演会に向けての意気込み】
今回の試演会で私が取り組んでいるキーワードは「皮膚」です。幼い頃から悩んできたアトピー性皮膚炎の痕や、掻きむしった跡、日焼けのムラ……そういったものを、ただのコンプレックスではなく、「時間が堆積した地図」として見つめ直せないかと考えています。

皮膚は、外側の世界と内側の自分を分ける境界でありながら、誰かと触れ合うことで一番最初につながる場所でもあります。松本に通う中で感じた空気の冷たさや、山の稜線のかたち、まちで出会った人たちの声やまなざしも、ゆっくりと自分の皮膚にしみ込んできました。試演会では、そうした「しみ込んだものたち」が、動きや息づかいとなって立ち上がる瞬間を、観てくださる方と共有できたらと思っています。
まだまだ制作の途中ではありますが、「完成品」をお見せするというより、「いま、ここまで来ました」という現在地の報告会のような場になればうれしいです。踊っている私自身も、毎回少しずつ違う発見をしながらステージに立つことになると思います。

どうぞ、週末のお散歩のついでのような気持ちで、ふらりと劇場に遊びに来てください。そして、もし何か感じたことがあれば、終演後にこっそり教えていただけたら、とても心強いです。松本の皆さんと一緒に、この作品がどんなかたちに育っていくのか、長い目で見守っていただけたらうれしいです。


